取引参加者の健全性の維持?向上

投資者からの注文は取引参加者である証券会社等を介して取引所に発注され、取引成立後の決済処理も取引参加者が介在することになります。取引所市場の信頼を確保するためには、取引参加者により投資者からの注文が適切に受託され、執行されることが必須となります。

このため、日本取引所自主規制法人(以下「JPX-R」という)及び東京商品取引所(以下「TOCOM」という)では、取引所の取引資格を付与する際の審査を実施するとともに、取引参加者が法令や取引所の規則を遵守して業務を行っているか、経営又は財産の状況が適切かどうかなどを調査し、必要に応じて注意の喚起や処分内容の決定等を行っています。

健全性の維持のために

取引資格の取得審査

東京証券取引所市場、大阪取引所市場及び東京商品取引所市場において、直接取引を行うためには、各取引所の取引資格が必要となります。この資格を得て取引参加者となるには、取引所市場の公共性にかんがみ、公正な価格形成及び円滑な流通の確保などに資するため、一定の基準を満たすことを求めており、取引資格の取得基準に基づき審査を実施しています。取引資格取得基準は形式基準と実質基準に大きく分けることができます。
特に、実質基準に関する審査においては、書類審査及びヒアリングのほか、資格取得申請会社の本支店等を審査担当者が訪問して、社内管理体制の整備状況を確認したり、経営責任者(社長?CEO等)との面談を実施するなどの審査を行っています。

取引参加者への考査

JPX-R及びTOCOMは、現物及びデリバティブ取引の受託?執行?受渡決済に関する業務について、取引所の取引参加者が、法令及び取引所諸規則を遵守しているか、不公正取引を防止する等の業務執行体制が適切に整備されているか、財産の状況が適切かなどを調査し、市場の公正性?信頼性の確保に努めています。

以下では、考査の種類?方法、考査のフローについてご紹介します。

考査の種類?方法

下表のとおり、考査には、「一般考査」、「フォローアップ考査」、「特別考査」の3つの形態があります。また、考査の方法には、「実地考査」、「書類考査」があります。

考査の種類 特徴
一般考査 過去の考査結果や証券取引等監視委員会の検査結果等の内容に加え、前回考査からの経過日数等を勘案し、考査の必要性が高いと認められる取引参加者から順次実施する検査です。
フォローアップ考査 考査終了後、必要に応じて1年程度以内に改善状況の確認を行う検査です。
特別考査 各種情報に基づき特定の事項にスポットを当てて行う検査です。
  • 一般考査においては、原則、日本証券業協会及び各地取引所と同時に臨店して一体的に行う「合同検査」により実施しております。
考査の方法 特徴
実地考査 取引参加者の本店?支店の中から数店舗を選択し、当該店舗に臨んで(臨店して)行う考査です。ほとんどの考査はこの方法で行います。
書類考査 考査事項やその他の状況により、取引参加者から提出された各種資料で足りると判断される場合に、臨店は行わず、提出資料により行う考査です。

考査のフロー

考査は、a.取引参加者の選定→b.事前調査→c.実地考査→d.審査及び判定→e.講評→f.措置等→g.アフターケアといったフローで行います。

考査のフロー
  • オフサイトモニタリング
    取引参加者に係る各種届出?報告書、売買状況、清算に関する情報、財務会計情報等を収集?分析し、取引参加者が健全な体制や財務基盤等を保持しているかを機動的に確認しています。

    (参考)意見申立て制度(JPX-R「業務規程施行規則」第10条?TOCOM「取引参加者に対する監査に関する細則」第10条)
    考査手続の透明性と考査の質的向上を図るため、意見申立て制度を設けています。
    この制度は、考査員と取引参加者との間で事実の認定に関する認識について相違がある場合、当該取引参加者は、JPX-R又はTOCOMに対し、当該事項について書面にて意見の申立てを行うことができるものとする制度です。

取引参加者への処分内容の決定

考査や当局の処分によって取引参加者が法令や取引所規則等に違反する行為を行ったと判明した場合は、その内容に応じて、取引所は取引所規則に基づき処分を行うこととしています。

処分の種類

  • 取引資格の取消し
  • 売買等の停止又は制限
  • 過怠金の賦課
  • 戒告

処分の流れ

JPX-Rの場合

JPX-Rは、JPX-Rの諮問委員会である「規律委員会」に諮問のうえ、戒告、過怠金の賦課、有価証券の売買等の停止若しくは制限又は取引資格の取消しといった処分内容の決定を行います。

  • 処分内容を決定する際の留意事項については、以下のページをご参照ください。
処分内容を決定する際の留意事項
処分の流れの図(JPX-Rの場合)

TOCOMの場合

TOCOMは、自主規制委員会(※)での審議を踏まえ取締役会で制裁内容を決定します。

  • 自主規制委員会
    取締役会の諮問機関として自主規制委員会を設置し、同委員会が自主規制業務に関する事項の審議を行うこととし、さらに自主規制委員会の職務を補助する自主規制を担当する部門を設置しております。
  • 制裁内容を決定する際の留意事項については、以下のページをご参照ください。
制裁内容を決定する際の留意事項
処分の流れの図(TOCOMの場合)

サポート活動

考査部及びTOCOM自主規制室では取引参加者の健全性の維持?向上に向けて様々な活動を行っています。その一部についてご紹介します。

考査実務者セミナーの開催 取引参加者のコンプライアンス担当者を対象として、法令諸規則の理解向上等を目的に、考査で認められた指摘事例等を紹介するセミナーを開催しています。
コンプライアンス説明会の開催 法令諸規則遵守の徹底を図っていただくために、取引参加者から要望をいただいた場合などに社員を派遣し、コンプライアンスに関する説明会を行っています。コンプライアンス説明会においては、取引参加者からの個別のご要望を踏まえ、各社の役職員に対し、法令遵守を徹底した業務を行うための社内管理体制の構築や具体的留意点、また、具体的な違反事例紹介及びその解決策などについて解説しています。
ケーススタディ集の発行 考査部では、取引参加者の皆様方のお問合せやご質問にお答えしていますが、ケーススタディ集は、こうしたお問合せや考査で認められた違反事例に対する対応策等を、Q&A方式で取りまとめ、配布しているものです。作成にあたっては、必要があれば関連諸機関に確認を行うなどして、可能な限り的確な内容となるよう努めています。

関連機関との連携

取引参加者の健全性の維持?向上に向けて検査に関する情報の交換等、関係機関と連携をとっています。

証券取引等監視委員会等の当局への報告 考査終了の都度、個別の考査結果を報告することに加え、半期に一度、考査計画や考査結果の集計、考査における重点事項、トピック事項等について説明を行っています。
情報交換会議の開催 各規制機関同士の情報の共有化等を目的に開催しています。金融庁、証券取引等監視委員会、財務局及び日本証券業協会の検査担当者が出席し情報交換を行っています。
各自主規制機関との合同検査 考査の効率化の観点から、考査対象となる取引参加者に対し、日本証券業協会及び所属金融商品取引所が同時に検査(考査)を実施しています。